1か月ほど前、親切な方から釣りたてほやほやのカツオを頂いた。 しかもバッチリ血抜き、解体済み。本当にありがたいことである。
お刺身に漬け丼、アラはラーメンにしてもう十分堪能したな、と思ったところで目に入ったのが残った内臓。釣りたてだけあって、ぷりぷりで綺麗な色をしてなんだか美味しそうだ。 カツオの内臓といえば酒盗という料理があったな。 自分ではあまり大きな魚は釣らないので、こんなに新鮮なカツオの内臓が手に入ることが今後あるかどうかわからない。使わない手はないだろう。というわけで、やってみよう。
内臓を塩漬けにする
酒盗なんて作ったことがないのでネットで作り方を検索。 なるほど、内臓を塩漬けにして発酵させて作るのね。まずは下処理だ。
大きな魚の内臓はなんというか、生々しい。姿かたちは違えど、我々は同じ脊椎動物なのねという謎のシンパシーを感じながら、胃腸を切り開いて中のぬめりを包丁で良くこそげ落とす。肝臓と膵臓はさっと洗っておく。
下処理中の写真がないのは、カメラを持つためにいちいち手を洗うのが面倒だったからである。調理中の細かい過程を写真に残している人はマメだなぁ。だれか代わりに撮ってほしい。
処理した内臓は一度軽く塩をまぶして1時間程度置いておく。長期保存の前のプレ水抜きをしておくとよいらしい。待っている間にのんびり風呂に浸かっていたら2時間ほど経ってしまったが問題ないだろう。膵臓・肝臓からはかなりの水がでていた。
一度塩を洗い流して、キッチンペーパーでしっかりと水気を取り、改めて塩漬けにする。 塩の量は調べてもサイトによってまちまちだったので景気よくザバッと入れた。足りないよりは多い方が良さそうだもの。
これで酒盗づくりの第1段階の支度が出来た。 このまま1か月、放って置くのだそうだ。常温がよいとか冷蔵庫がよいとか情報は色々あったが、小心者の私は冷蔵庫にしまうことにした。さようなら、また1か月後にね。
こういう匂いのあるものを保存する時はガラス容器が便利ね。
塩漬け内臓を調味する
あっという間に1か月が経過。 もうコートを羽織る季節になった。まだ「2018年」という西暦に慣れていないのにもう年末である。物事への適応スピードは落ちているのに時間は加速して感じられる。加齢って恐ろしいわ。
例のカツオの酒盗の素であるが、パッと見た感じ腐敗やカビはなさそうだ。そうだよな。あれだけ塩を入れたんだもの。 まぁ、冷蔵庫は毎日開けるし、しかも一番手前にしまったので内臓たちとは毎日顔を合わせていたからあまり心配はしていなかったんだけどね。
毎日見ていると変化に気付きづらかったが、こうして写真を比べてみると色も質感も1か月前とは全然違う。全体的に乾いて色がくすみ、大きさも縮んだようだ。塩を洗い流し、キッチンペーパで水気をとってみる。
この内臓をペースト状にしていく。ネットには「フードプロセッサーを使いましょう」とあったが、この少量の物体のためにフードプロセッサーを取り出すのが面倒だったので、包丁でたたくことにした。
ここまでにするのに15分くらいかかってしまった。量はわずかだが、肝臓がとにかく包丁にくっついて切りづらいのだ。匂いは、ただの生臭さではない、既に「酒盗」のニオイがする。成功っぽいな。
酒とみりんをほんの少量、加えて混ぜたら、酒盗作りの第2段階は完了だ。 そうこれで完成ではないのである。ネットによると、ここから1~2週間寝かせよ、とある。 そうすることで塩かどが取れ、生臭みが消えてくるのだそうだ。
しかし私は待てない性分である。ちょっぴり食べてしまおう。 ぺろり。わ、塩っ辛い!でも後から強い魚のうま味がギュギュっと攻めてくる。舌が酒を探している。アンチョビみたいだな。市販のモノのような滑らかさはないが、コリコリとした噛み応えが楽しい。こりゃ成功だ。
それから更に4日寝かしてから、今度は酒とクリームチーズを用意して食べてみた。 酒盗の塩辛さと生臭さをクリームチーズが優しく包みこんで、うまみをプラス。これぞまさにマリアージュ。発酵食品どうし、相性が悪いわけない。そこにくいっと酒を流し込めばもうご機嫌である。あしらったゆず皮の香りもいい。
これはいいものを作った。自分で作ったという喜びもプラスされて一層美味しい気がする。カツオを釣るところからやったらもっと達成感があるのかな。 4日程度の寝かせ時間ではさほど味の差は感じられなかったが、まだ残り3/4ほどあるのでチビチビと味の変化を楽しんでいこうと思う。 半年くらい持つという説もあるが、その前に食べきっちゃいそうだな。
新鮮なカツオの内臓が手に入った人は、ちょっとの手間だしやってみるといいですよ。