イシダイを出来る限り食べ尽くしてみた

ある日突然、我が家の台所へ2尾のイシダイが舞い降りた。
もちろん、私が釣った・・・わけではない。

イシダイ釣りは釣り餌にウニやサザエを使うという高級さ、しかも熟練者が揃いも揃ってボウズということがザラにあるらしいというハードルの高い磯の王者である。その上、食味は素晴らしい(以前お店で食べたことがある)。

そのイシダイをなんと1人で9枚も釣り上げた方が、「食べきれないので」と、たまたま家が近い我が家へ置いて行ってくださったのだ!

私の手と比べると大きさが分かるでしょう

こんな立派なイシダイを調理させてもらえる機会が今後人生にあるかわからない。
万全の態勢で臨みたいところであったが、チャンスというのは急に訪れるもの。 何の知識も技術もない私だけれど、折角の頂きものだ、隅々まで味わってやろうじゃないの!

お前に俺が扱いきれるのか、と問いかける瞳

イシダイをさばく

こんなに大きな魚をさばいたことは人生で一度もない。最大でサバである。
我が家の一番大きな入れ物(ボウル)にも全然入らない大きさにパニック・大興奮!

買ってから一度も使っていなかった大きな魚用のウロコ落としで顔中をウロコまみれにしながらまずは下処理。 イシダイのウロコ、剥がれづらいよ!
そしてたまたま気分で研いであった小出刃に精いっぱい頑張ってもらって内臓を抜き、頭を落とす。

骨が固くて切れず、ねじ切った頭

切れ味の良い包丁を使うと自分の腕が上がったように感じる

絵に描きたい美しい骨型

イシダイは内臓も美味しいと聞いたので、ちゃんと取り分けましたよ。
なんと2尾とも卵を持っていた。それにしても大きな魚の内臓ってこんなに存在感があるものか。 写真には撮らなかったけれど、胃と腸からまだかなり形の残ったヤドカリの残骸がもりもり出てきた。

イシダイのモツセット

アラも無駄にはしないぜ!

内臓は塩でぬめりを取り、アラと頭は湯通しして冷凍、身はキッチンペーパーで脱水しながら真空パック、とアドレナリンの放出に任せて一気に1時間半かけてイシダイをさばききった。
身は寝かせた方が美味しいと聞いたので、その日のうちは食べずに、戦いの跡(台所の惨状)を片付けてぐっすり眠った。

※得た教訓
・ウロコがしっかりしている魚はカバー付きウロコ取りで挑むべし。
・骨が固い魚は小出刃では頭が割れない。
・包丁はいつも研いでおけ。


イシダイ料理オンパレード

翌日から我が家の食卓はイシダイ三昧。なんて嬉しい三昧。 定番から変化球まで、成功も失敗もあったけれど毎日料理するのがとても楽しかった。

イシダイの刺身

まずは刺身でしょう、ということで一番綺麗に取れたサクをお刺身に。
まだ寝かせて2日だったので結構弾力が残る食感に、かすかな磯の香、上品なうま味。美味しい。 脂は卵の方に栄養が取られてしまったせいか、少し控えめだけれどサッパリ夏らしくてこれはこれで良い。

イシダイのお刺身をお腹いっぱい食べられるなんて、なんて贅沢なんでしょう!

血合いの色が綺麗で見栄えがするな


イシダイの内臓の甘辛煮

卵、肝臓、心臓を甘辛くにつけて柚子をあしらった。
臭みなどはまるでない。卵はとてもきめ細かく、表面の膜ごと噛むともっちり、中はなめらか。 肝臓は鶏レバーみたい。少し苦みがある。心臓は小さいながらも存在感のある弾力だった。 甘辛の味付け、良いね。


イシダイの胃腸のバター醤油ソテー

開いて中を洗って綺麗にぬめりを取った胃腸を湯通し後、白ワイン、バター、醤油で炒めたもの。 グニッとするけどすぐ噛み切れる不思議な食感にバターが絡んでこりゃ美味。 苦労して中身(結構匂いが強かった)を取り出した甲斐があった。


イシダイのカブト焼き

本当は縦に割りたかったのだが、どうやっても私の小出刃では割れなかったので丸ごとオーブンに放り込んで50分ほど焼いたもの。
さすが、大きな魚は頭も食べるところがたっぷりだ。そしてじっくり焼いたゼラチン質がねっとりとしてうっとり。 皮も香ばしく、夢中で食べた。

貝を殻ごと砕くだけある、すさまじい歯とやたら分厚い頬肉

舌も肉厚でトロッとうまい。骨までしゃぶりつくした


イシダイのポワレ風

イシダイの皮目をフライパンでカリっとなるまでバターをスプーンでかけながら焼いた一品。
フライ返しで押さえながら、かなりじっくり皮を焼いたつもりだったが、それでもまだ少し焼きが足りなかった模様。グニッとした食感が残ってしまった。イシダイの皮、分厚くて手強し。
身の方はちょうどいい加減、火を通しても結構弾力がある。肉厚なのでしっかり塩をすると良いかも。

ポワレの下に敷いたのは、ラタトゥイユ。
普通に作ったラタトゥイユにイシダイのアラでとった出汁、イシダイを焼いた後のバター、イシダイの身の切れ端を加えて煮詰めて濃い目の味にしたものだ。これもなかなかの旨さ。

8人前作ったのに2食でなくなった


イシダイのカルパッチョ風

さらに数日寝かせたお刺身を実山椒、ゆず皮、オリーブオイル、レモン汁、塩でカルパッチョ風に。
身の食感がねっとりと変わってきて、更にうまみが増している。 あっさりした味をオリーブオイルで補うことでバランスが取れた気がする。

味も香りも自信作!


イシダイの漬け丼

醤油・酒を煮切ってピリリと青唐辛子を利かせた漬けダレに10分付けた薄切りのイシダイを、赤酢で作った酢飯に乗せた。ちょっと濃い目の味付けに卵黄がぴったり。水分が抜けて締まった身と酢飯の馴染みがとても良かった。


イシダイの塩焼き

シンプルに塩を振って焼いてみた。
皮目に切れ込みを入れなかったので反り返ってしまったのと、しっかり焼きすぎたのか皮がタイヤのゴムのように強靭な食感になってしまった。味はいいんだけどね。皮にゼラチン質を感じたので、弱火でじっくり焼くか、やはり皮だけ剥がして湯通しポン酢が正解なのかもしれない。

皮の厚みと弾力で前歯が持っていかれそうだった


イシダイの出汁茶漬け

イシダイのアラをオーブンでじっくり焼き、煮出した出汁を使った出汁茶漬け。
アラの身もすべてほぐして生姜で炒め煮にしたものを乗せた。 しみじみ、美味しかったなぁ、イシダイ。ホッとする味。

美しい黄金の出汁がひけた



こんな具合でイシダイを食べ尽くした数日間。
次はどんな料理にしようかと思いめぐらす時間が幸せだった。 イシダイをくださったMKさん、本当にごちそうさまでした!

実はまだ冷凍したアラと皮が少しあるので、時間が出来たらまたお料理しようかな。