イカ貝解剖会 α版 in 製麺会

ひと月ほど前、友人であるテレサ君の結婚お麺でとう製麺会に参加してきた。
新婚のテレサ君に、料理好きの参加者たちが各人のオリジナル麵料理をふるまってお祝いしよう!という会である。キッチンスタジオを借り、製麺機でその場で製麺。情報が多い。

小野式と田中式の製麺機(玉置さんの私物)

ともかくそんな楽しい会の中で、少し時間をもらって解剖会をすることになったのだった。製麺会で解剖会とはかなりの飛躍に思えるが、この解剖会は以前から私(イカ好き)とテレサ君(貝好き)とで温めていたものである。365日野草生活ののんさん(野草好き)がそれを覚えていて、ちょうど二人が揃うこの機会に練習としてやってみてはどうかと提案してくれたのだ。

二つ返事で承諾したものの、いざ当日になったら不安になってきた。幹事ののんさんは本物の結婚式さながらの司会ぶりで(原稿まで作っていた)、ケーキ入刀ならぬ肉入刀からのファーストバイトで大盛り上がり。参加者の皆さんから繰り出されるオリジナル麺料理はどれも新鮮なおいしさで、誰もが顔をほころばせていた。そんな中、異色の出し物が始まって場が白けないだろうか。ありがたいことに、それは杞憂に終わった。

イカ・貝 解剖会 α版

イカ・貝 解剖会とは、イカと貝を並べてそれぞれの愛好家が交互に解説をしながら解剖し、それを参加者に見てもらうという会だ。こうやって書くと全然面白くなさそうだな。

イカと貝をセットにして解剖するわけは、単に私とテレサ君が好きな生き物だからというだけではない。イカと貝は同じ軟体動物に分類されている割に、随分見た目が違う。そういう生き物同士を比べっこしながら解剖することで、相手だけでなく自分の愛好する生物についても理解が深まるのではないか。また、愛好家ではない参加者にとっても、「食材」として身近なイカと貝を「生き物」として観察したら面白いのではないかという希望的観測があった。

今回使用したのはスルメイカとハマグリ(たしかチョウセンハマグリ?)。どちらも比較的入手しやすく、適度な大きさもある。 私がイカをセッティングしている横では、テレサ君がハマグリを茹でていた。茹で……?え?と思っていると、「火を通した方が内臓などが見やすいので」とのこと。確かにテロテロだった部位がギュッとして輪郭がとらえやすい。イカも吸盤の配列などは火を通した方が分かりやすいので、次回から使えそうな手法だ。

準備している段階でもう、これは何イカ?など質問が出るなど参加者の興味がうかがえて少し安心した。まずは外形の観察をして、続いて中を開け細かく内臓を見ていく。簡単な解説部位(イカ)は下記の通り。

外形の観察

  • 前後左右上下
  • ヒレ
  • 外套膜
  • 外套軟骨器・漏斗軟骨器
  • 漏斗

内臓等の観察

  • 循環器(エラ、エラ心臓、心臓、血液)
  • 消化器(食道、胃、盲嚢、膵臓、直腸)
  • 墨袋
  • 口(カラストンビ、歯舌)

外套膜を開かれたスルメイカ
外套膜を開かれたスルメイカ

細かくやると見どころは30箇所以上あるので、フルで解説+質疑応答するとイカだけで3時間くらいかかってしまうだろう(脳内シミュレーション)。今回はテレサ君と2人で1時間の持ち時間(調理含む)だったため、かなり簡略化した。このあと食べるし。

内容は端折るが、「イカの口ってそこ?」とか「貝って脳はあるの?」「二枚貝はどうやって歩くのか」「イカと貝の漏斗と水管は対応する部位なのか」などなど、参加者のみならず解説側にも新鮮な驚きと疑問が次々生まれ、大変有意義な会になった(と思う)。

生き物への興味が強く、学ぶことが好きな方々が参加者だったのも大きいが、解説側が接待を受けているのかしらというほど楽しく、予想以上の手応えを得られて嬉しい。のんさんなどは、その場で手書きのメモを取っていて、さすが。

解剖した後のイカと貝たちは、玉置さんの手によって海鮮焼きそばに変身した。その場で蒸した麺がゴワゴワで旨い。

このためにでかい蒸し器を持ってきてくれてありがとうございます玉置さん

今後のイカ・貝解剖会

今回はデモンストレーション形式だったが、1人一匹ずつ自分で解剖するハンズオンのほうが近くでじっくり観察できて良いかも。時間があるなら簡単なスケッチをしてもらうのもいいな。図解などの資料も作りたい。夢が膨らむ。

一番悩んでいるのは解剖後のイカと貝の処理。自分1人で解剖したり、今回のように短時間で済ませる場合は食べても問題ないと考えているけれど、ハンズオンで解剖してもらったイカを食べるか否か。安全面を考えると否だろうなぁ。でも捨ててしまうのも悲しい。今後の課題である。

最後に、いただいた美味しいオリジナル麺でさようなら。のんさん、玉置さん、テレサくん、美味しい麺プレゼンター、参加者の皆様ありがとうございました!