粟島で(さのくに氏が)捕ってきたタコ。 手ごろな大きさの生タコを入手したら、一度やってみたいと思っていたことがあったんだ。
干しダコ。それも姿干しのやつ。
タコのあの奇妙な形をそのままに残すことができるって素敵じゃないですか。そうでもないですか。そうか。 生きているときはイカのほうが好きなのだけれど、干された姿はタコの方が格好いいと私は思う。
パッと見た感じは特別な技術や道具は必要なさそうだし、早速やってみよう。 兵庫県立農林水産技術総合センターが公開している手順を参考に、面倒なところを端折ってやってみた。
参考:干しダコの作りかた 兵庫県立農林水産技術総合センター http://hyogo-nourinsuisangc.jp/6-mame/img/suisan/6.pdf
干しダコの作り方
準備したもの
- 生のタコ
- 竹ひご
- カッターナイフ
- ライター
- S字フック
- キッチンバサミ
下準備
まずはタコの下ごしらえから。 一度冷凍したタコを、真水で良く洗ってぬめりを落とす。内臓、目、口は取り除き、足の部分は腹側からはさみを入れて開いておく。 ここまでは普通の料理時の下ごしらえと同じだ。 水気をよくふき取り、他の準備が終わるまで冷蔵庫で待機しておいてもらう。
続いて、干している間にタコが型崩れしないよう支えるための型を準備する。 今回作ろうとしている干しダコのイメージは、足が下になるように、胴(イラストなんかでは、よくハチマキ巻いているところ)の先の方に穴をあけて S字フックを差し込み、吊るして干すというものである。 そのまま吊るしてしまうと、胴の丸い形が足の重みで引っ張られて不格好になってしまうので、竹ひごで弓状の型を作って入れる。 足の方にも竹ひごを刺し、上手いこと開いたまま干せるように工夫する。
材料の竹ひごは100円均一ショップで購入した。 タコ糸は何かに使うかなと思って用意したが、結局使わなかった。
「型を作る」なんて大層な感じだけれど、竹ひごを弓状に曲げてタコの胴へ突っ込むだけだ。 竹ひごをライターで炙って、曲がりやすくしよう。
これでグニッっと・・・・曲がらなかった。折れた。 タコが小さいので結構な角度で曲げなくてはならないのだが、竹ひごが太すぎて弾力がなく、曲がる前に折れてしまう。 本当はペラペラの平ひごが欲しかったのだが、近所のセリアには切り口が丸い丸ひごしか置いていなかったのだ。
それならば自分で丸ひごを平ひごにしてしまえばよい。 カッターナイフで丸ひごを割いて、厚みを薄くする。
丸ひごを1/4くらいの厚さにしたところ、綺麗に曲がるようになった。 そうそう、こんな感じにしたかったんだ。
それでは続いて、足を広げて固定するための竹ひごをちょっと細工。 タコの足に刺して固定するので、竹ひごの先を尖らせる。両端を尖らせた竹ひごを2本用意する。
これで下準備は完了だ。
タコに型を入れて吊るす
先ほど準備した竹ひごをタコにセットしていく。 まずは胴。弓状にしならせた竹ひごを、タコの胴に差し込む。
吊るすために、胴の先の方にちょっと穴をあけて、S字フックを通す。ぐいぐい。
シンクに吊るしてみた。 この状態で、キッチンバサミを使って仕上げをしていく。 足の根元がくっついていて乾きづらいので、傘膜一枚残して切り離す。 吊るしてあるので非常に作業しやすい。 更に、足に竹ひごを刺していく。一番外側の足と、その反対側の外側から2番目の足を1本の竹ひごで裏側から刺す。 刺したところの写真を撮り忘れてしまって分かりづらいのだが、次の写真を見ると言っている意味が分かるかと思う。
ここまでできたら、後は干すだけ! この日は運よく晴天。最近の長雨に入る前の貴重な晴れの日にタコを干せてよかった。 足に刺した竹ひごの感じもこれでわかると思う。 思っていたよりも格好良くできて、嬉しさのあまりタコと記念撮影してしまったほど。 このまま2日間、外で乾燥させて完成だ。
2日干したものがこちらである。 胴と足に入れた竹ひごを取り除いても、しっかり形を維持したまま。 全体的に色は濃くなり、頭の部分などはセロファンのように透けている。 このまま冷凍で保存もできそうだ。でも今回はもう食べちゃう。 ここまで手間をかけて干したのになんだか惜しい気がするけれど、オブジェとして飾っておくには生臭すぎる。
干しダコでタコ飯を作る
干しダコを使ったレシピといっても、炙ってそのまま食べるかタコ飯くらいしか思いつかなかったので、多少料理っぽいタコ飯を選択。 もし他に美味しい干しダコ料理をご存知の方は教えてください。
材料
- 干しダコ(1匹、約50g)
- 米 2合
- 醤油 大さじ1
- 酒 大さじ1
- みりん 大さじ1
- 出汁 適量
- しょうが 適量
- 三つ葉 適量
まずは干しタコを少な目の水で戻す。 戻すためにはタコを細かく切らなければならないのだが、愛着がわいてしまってなかなか切れない。 粟島で捕られ、冷凍され、8時間かけて太平洋側までやってきて、真水でもみ洗いされ、妙な形に固定されて干され、干されたと思ったら刻まれてまた水に戻される・・・。 すまない。せめて美味しく食べるから許してくれ。
水に戻すと膨らむことを考えて、少し細かめにキッチンバサミで切る。 大きな干しダコは固いので切る前に炙るとよいらしいが、これくらいの大きさならそのまま切ることができる。
2時間でまるで生タコのように戻った。プルプル。 研いだ米と調味料、タコの戻し汁を炊飯器に入れて、2合のメモリまで足りない分の出汁を追加。上から戻したタコと千切りのしょうがを乗せて炊く。 土鍋でやったらもっと美味しそうだけれど、私の身長では届かない位置に土鍋が仕舞われていたので断念した。
タコ飯に限らないけれど、炊き込みご飯って炊いているときの香りが最高だよね。 食べてる時より、香りを嗅ぎながら炊き上がりを待っているその時が、気分の最高潮だと思う。 さのくに氏のダイエットのために、否が応でも米が進んでしまう炊き込みご飯は封印していたのだけれど、一度封印を解いてしまったらもうやめられない気がしてきた・・・。
というわけで炊けた。
タコのうま味が硬めに炊いた米に染み渡り、噛み締めるたびに幸せ。タコも適度な弾力だ。 具をシンプルにタコとしょうがだけにしたのもよかった。部屋中がタコの香ばしい香りに包まれて食欲を刺激してくるため、おかわりが止まらない。 20分も経たぬうちに、2人で2合があっさりなくなった。
タコを干した効果が味に影響を及ぼしているのかどうか分からなかったけれど、さのくに氏もモリモリハイスピードで食べていたので美味しかったことは間違いない。 干していないタコで作ったタコ飯と食べ比べをしてみたいな。次やろう。
形は格好いいし、保存はきくし、作って楽しいし、干しダコやってみて良かった。 竹ひご(平ひご)さえ用意してしまえば、そんなに手間もないし。 今回はオーソドックスな形の干しダコにしたけれど、もっと自由なポーズをとらせてみたら楽しそう。 今度はもっとたくさんタコを捕って、ベランダに干しダコを何体も並べてみたい。揺れる干しダコを眺めながら、酒を飲むのも良いかもしれないな。