冬のロゼット植物観察

「最近、ちょっと草にも興味が出てきた」という話をしたら、 植物観察会に誘って頂けたので、さのくに氏も連れて参加させてもらった。

誘ってくださったのは、自分で野草を摘み、毎日のように食べている365日野草生活さん。 野草全般に詳しく、なかでも特に食べられる草に詳しい。 昨年、野草生活さんが主催された葛の根を掘るイベントで初めてお会いした。その時の様子もそのうちブログに書きたいな。

今回メインの案内役は植物画家の方。たびたび同じ公園で植物を観察されているそう。 植物好きでわざわざ1時間半かけて観察会へやってきたMさんも一緒に参加。

何も知らない初心者は私とさのくに氏だけだ。
野草生活さんに、「冬のロゼット観察は玄人向き。お花もないし、公園だから摘んで食べられるわけでもないし、ほんとに大丈夫?」と心配されたが、 これがとっても面白かったのだ。自分でも意外だったし、さのくに氏が興味を示したのはもっと意外だったが、クセになりそう。

どんな植物を観察してきたか、記念すべき第1回目の記録を残しておこう。(また行く気満々)

ロゼットってなんだっけ

まず今回のテーマは「ロゼット観察」とのことで、ロゼットについて予習しておいた。
ロゼットとは、植物の生え方の状態を示す言葉で、 茎をあまり伸ばさずに葉を密集させ、地面に張り付くように放射状に広げている状態のこと。ふむふむ。ここまではなんとなく知っているぞ。

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こういうのが「ロゼット」。

周りに葉をワサワサ茂らせる大きな植物が多い環境では、ロゼット型は背が低くて圧倒的に不利である。 葉を低い位置(地面に張り付くくらい)につけるので、他の植物の影になってしまい十分に光を受けられない。

しかし、大きな植物が育たないような厳しい環境であれば、ロゼット型には色々メリットがあるらしいのだ。
厳しい環境とは気温が低い冬、高山、荒地など。
葉をピッタリ地面に張り付けているので、気温が低くても太陽で温まった地面の熱で葉を温めることができるし、 雨風で茎が折れたり傷つく可能性も低い。 茎を伸ばさないから、その分のエネルギーを別の使いみちに充てることもできる。なるほどよくできてる。

ロゼットと言えばタンポポくらいしか思い浮かばないんだけど、そんなに色々あるのだろうか。
まぁともかく、行ってみましょう。

いざ観察へ!

この日はお日様が顔を見せてくれず、先日の大雪がまだ残る地面はツルツルに凍結。 足元に気を配りながらの観察となった。
ほんとにこんな季節に観察するほど植物生えてるのかな。

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あれ?雪国かな?と錯覚

キク科のソックリさん その1

最初に向かったのは、ハルノノゲシとオニノゲシが生えているところ。
そもそもこの日の観察会は、この2つの植物の見分けを勉強したくて開かれたものらしい。

どれどれ、見てみましょう。そんなに似ているのかしらん。
これがハルノノゲシ。

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ハルノノゲシ

そしてこれがオニノゲシ。

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オニノゲシ

えっ。
これ同じ草では・・・?このそっくり具合には野草生活さんも最初は首をかしげるほど。 植物画家の先生に見分け方を教わる。

  • 触り心地が固く、とげとげしてて痛いのがオニノゲシ
  • 葉に深い切れ込みがあって、先の方が矢じり型になっているのがハルノノゲシ
  • 深い切れ込みはないが全体的にトゲトゲしてて細長い葉なのがオニノゲシ

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左がハルノノゲシ、右がオニノゲシ
ふむふむ。少し育った葉を見るとわかりやすいな。

これは切れ込みがあるからハルノノゲシ。黄色い花もついている。

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ハルノノゲシ

トゲトゲチリチリのオニノゲシ。

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オニノゲシ

ハルノノゲシかな?と思いきやこれはショカツサイというアブラナ科の植物だそう。似すぎ。花が咲けば全然違うのが分かるけれど、ロゼット状になっていると見た目だけでは判別が難しい時もある。 そんな時は五感をフル活用して確かめるそうだ。確かにショカツサイは大根みたいな匂いがする。

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ショカツサイ

こいつはハルノノゲシ。紫色っぽいのは紅葉しているかららしい。

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ハルノノゲシ

さのくに氏がノゲシと見分けがつかないと言っていたセイヨウタンポポ。
何度も見た後だとはっきり違うのがわかるね。

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セイヨウタンポポ

最後、この爽やかな緑の植物もハルノノゲシ。

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ハルノノゲシ

野草生活さんから「そういえばノゲシは食べられますよ!」との一言。
なんでもレタスの原種だそうだ。 茎を折るとレタス同様、乳白色の液体が出てくる。香りもレタスっぽい!
ハルノノゲシ、オニノゲシどちらも食べられるそうだが、ハルノノゲシの方がやわらかくて苦みも少なくおススメとのこと。 茹でると苦みが増すのでサラダがおススメだって。
今回の観察は公園(採取禁止)と犬の散歩コースの道端(犬のオトシモノが・・)だったので採取はできなかったけれど、 良さそうな場所で摘んだら食べてみようかな。

シソ科のソックリさん

ノゲシの仲間をいくつも観察し、もうかなり勉強した気になったが、まだまだ観察会は続く。 普段は見向きもせずに歩いている道路脇に目を凝らしながらゆっくり進んでいくと、私も知っている植物が。 「ホトケノザだ!」と得意げに言ってみたら、不正解。

同じシソ科のヒメオドリコソウだった。
葉がハート形っぽく、葉脈の模様が繊細で深いのがヒメオドリコソウ。お洒落なエンボス加工っぽいな。

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ヒメオドリコソウ

真上から見ると2つ対になってついた葉がまあるくみえるのがホトケノザ。
ヒメオドリコソウと比べると葉脈は大雑把な感じ。

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ホトケノザ

幼少期から図鑑にらめっこして良く調べた植物だっただけに、これは悔しい!
花がついてたら分かったのにな(負け惜しみ)。でもこうやって間違えたものほど後々忘れないものだよね。

更にこれらと似ている植物を教えて貰った。カキドオシ。
これはちぎるとスッとする爽やかな香りがした。 子供の疳の虫に効く生薬にもされるためカントリソウの別名も。 そういえば数年前に山梨で食べたことがあるな。薄紫色の可憐な花がサラダに載っていた。

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カキドオシ

「シソ科の植物は、茎の断面が四角いことが多いんですよ」と野草生活さん。
人に教えたくなるマメ知識をちょこちょこ投入してきてくれて、ますます観察が楽しくなってしまう。 シソ科ならなんか食べられそうだし、そこら辺の草をちぎって断面確かめてみようかな、なんて思っていたら 「あ、シソ科は食べられない草も多いんで」と見透かされたようなことを言われてドキッとした。

キク科のソックリさん その2

またもや知っているはずの植物を発見。あー名前が出てこない、もどかしい。

これはキク科のハハコグサ。
春の七草の「ゴギョウ」とはこのハハコグサのことなんだって。 葉や茎の全体に白くきめ細かい産毛が生えている。葉の形は柄が太いしゃもじみたい。

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ハハコグサ

たしかチチコグサってのもあったよな、と思ったらやっぱりあった。
ただしチチコグサには色々種類があるらしい。チチコグサ、ウラジロチチコグサ、タチチチコグサ、チチコグサモドキ・・
「なんだか浦和みたいですね」(浦和には南浦和、西浦和など7つの浦和がある)なんて話をした。

公園にはチチコグサの仲間の中で一番わかりやすい、ウラジロチチコグサが生えていた。 その名の通り裏が白い。葉の形はハハコグサに少し似ているが、葉の表面に艶があり、葉裏と茎にだけ白い毛が生えている。

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ウラジロチチコグサ

キク科のソックリさん その3

少しずつ移動して、時折冬の花にも目を向けながら観察を続ける。

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冬にも探せば花はあるんだね。蝋梅がいい香り

これだけ短時間にたくさんの植物を見ていると、どの部分に注目して観察すればいいのかだんだんわかってくる。 同じ科ごとにくくって見比べると違いを覚えやすい。
日本酒なんかも同じ銘柄で別の酒米とか製法のものを一緒に飲み比べると理解が深まるけれど、それと同じかな。

というわけで、またしてもキク科のお友達から。
春になると白い花を咲かせるヒメジョオンとハルジオン。
ずっと「ヒメジオン」だと思ってた・・・また一つ賢くなってしまった。 この2つの葉がそっくり!花が咲いていれば花びらの様子で区別がつくけれど、ロゼット状では全然差が分からない。

これがヒメジョオンだそうです。

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ヒメジョオン

そしてこれがハルジオン。

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ハルジオン

わ、わからぬ・・・・!
強いて言えばヒメジョオンの方がやや葉につやとハリがある・・のかな。 どちらも食べられるそう。春菊にそっくりなんだって。春菊好きだから今度摘んでみよう。
このそっくりな2つが両方食べられる植物でよかった。片方毒だったら凄いトラップになるところだ。

この差をしっかり確かめようと熱心に観察していたMさんが、犬のオトシモノにうっかり素手で触れてしまうというハプニングも発生。
しばらく手を洗う場所がなくて、一生懸命雪で汚れを落としていました(涙)。最終的には洗い場でしっかり洗えてよかったですね!
みなさんも植物観察時はくれぐれも気を付けましょう。

たった2時間で凄く賢くなった気分

Mさんにウンがついたところで、予定していた2時間が経過。観察会はお開きとなった。 ブログに書ききれないほどたくさんの種類の植物について教えてもらい、非常に濃密な2時間だった。

「今日だけで食べられる草、20種類くらい覚えましたね!」と言われて得意になった私とさのくに氏だが、復習しないと1週間後には忘れてしまいそう。 定期的に観察して知識を定着させたいな。

花や茎が伸びた状態なら簡単に区別がつく植物も、 冬の寒さに耐えながら縮こまっている状態だとなかなか見分けがつかない。 見た目だけでなく、香りや触り心地、生えている場所や季節などを総合して考えて 植物の種類を同定するのはゲームのようでとても面白かった。

普段はみな似たような草だと流し見していたけれど、 どんな草花も、誰かが見つけて分類し、ひとつずつ名前を付けたのだと思うと愛しいものだ。

もう少し暖かくなったら食べられる野草を摘んで、シフォンケーキに入れたりしたいな、なんてすっかり野草づいたまいけるであった。