いきなりすみません。 実は私、イカが好きなのだ。
好きと言っても食べ物としてではない。いや、食べ物としても好きなのだが、多くの人が犬や猫を愛するように、或いはそれ以上に、イカのことを想っている。
「イカのこと、どんな風に好きなの?」と聞かれることがあるけど、こんな感じです。
— まいける (@__maicos__) 2018年5月20日
・愛しい胸が苦しい飼いたいけど飼いたくない
・美しい描きたいその姿留めておきたい
・全てを知りたいバラバラにしたい
・釣りたい血湧き肉躍る
・美味しそう食べたい
まぁざっと、こんな具合に。 あ、逃げないで。まだ序盤だよ。イカ、怖くないよ。
このブログにはイカのことをまったく書いてないのに、突然こんなこと言われても困りますよね。お困りのところすみませんがこのまま進めます。
本当はもっとイカについて書こうと思って、ブログのURLに「sepio」というエスペラント語でイカという意味の言葉を入れたのだけれど、いざ文章にしようとすると止めどなく書くことが溢れてきて収拾がつかず、書くに書けずにここまで来てしまったのだ。
そんな私の元に「イカパーティー」のお誘いが届いたのは、今年の初夏のことだった。
イカパーティーへの誘い
招待メッセージにはこうあった。
美味しいイカ料理コースを食しながらイカについてお話しましょうという会です。 イカ好きさんやイカ研究者さんやイカ釣りさんやイカ作品を作っている作家さんが集まる予定です。みなさまでイカ交流をできてイカの世界の輪が広がるといいなと思っています。 人数は10〜20人になりそうです。
「是非参加させてください!」 考える前に私の手は送信ボタンを押していた。
改めて考えると、初対面の方と話すのが決して得意ではない自分が楽しめるのか、参加者のイカ愛のレベルがどの程度なのかなど不安が尽きなかったが、イカ好きに悪い人は居なかろうと思い込むことにした。
招待状以上の情報は何も知らぬまま、不安と期待で爆発しそうになりながら迎えたイカパーティー当日。 横殴りの雨の中、会場であるイリヤプラスカフェ@カスタム倉庫、略してイカ倉庫へ到着した。
まだ人は数人、会場の飾りつけの途中であった。 机の上にはポツンとドリンクメニューが。
▲さりげなくイカがあしらってある
おお、ダイオウイカ! このドリンクメニューの製作者こそ、今回のイカパーティーの主催者の一人で私を招待してくださった、宮内裕賀さんである。
宮内さんは「イカ画家」。 毎日イカを食べ、イカのことを考え、イカの夢を見て、イカだけを描き続けている人だ。 私にとってのイカが趣味であるなら、彼女にとってのイカは人生そのもののように見える。それくらいヤバい人である。(尊敬)
6年ほど前に存在を知り、展示会へ足を運んだりネットで作品を見るうちに惹き込まれ、小さくはあるが一つ、作品を迎えた。 宮内さんの本拠地が鹿児島で、私が住む土地と離れているためにしばらくお会いできていなかったところ、ここでの再会ができておおいに嬉しかった。
▲我が家の宮内さんの作品
宮内さんとの再会を喜びつつも、正直緊張で胃が豆粒くらいまで縮んでいた私は、動物園の熊のように会場内を行ったり来たりして開始までの時間をつぶしていた。
▲会場を彩るイカグッズたち。眺め飽きない
第1回イカパーティー開始!
そろそろパーティー開始の時間。 着席したものの、あんまり静かなのでお隣の方にこっそり「みなさんお知り合いではないんですか」と聞いてみると、「全然知りません」とのお返事。不安だ。 周りを見るとみなさんソワソワしている様子。イカ好きはシャイな方が多いのか。パーティーというよりは大学受験の結果発表前みたいな雰囲気がするけど大丈夫か。
主催者の宮内さんから簡単なご挨拶があり、いよいよイカパーティー開始! 私は緊張のあまり、飲まないと決めていた酒(ビール)を最初からがぶ飲みして自己紹介タイムへ突入。
参加者は、学生、主婦、社長さん、イカ研究者、アクセサリー作家、水族館の方など、多種多様な背景のメンバー10名。奇しくもイカの足と同じ数である。 不安をよそに、全員の自己紹介が終わる頃に会場はすっかり温かい雰囲気に変わっていた。 ちなみに私は名乗り忘れて「お名前は?」と優しく突っ込まれたことだけは覚えている。
▲料理もイカ尽くし!イカとゆで卵とルッコラのサラダ
イカを好きになったキッカケ
コミュニケーションスキルが欠如しすぎている私は、とりあえず自己紹介が終わったことで一旦燃え尽きてしまった。皆さん優しそうだけど、初めましての人たちと一体何を話せばいいのか・・・。
いや、悩むことは何もない。これはイカパーティー。イカのことを話せばいいのだ。 もう一杯ビールを飲みほして、会話にそっと参加。
アクセサリー作家であるAAYAAさんは、2013年に放映された「NHKシリーズ深海の巨大生物 伝説のイカ 宿命の闘い」から始まったダイオウイカブームをキッカケに、イカをはじめとする海の生き物に興味を持つようになったそうだ。
イカやタコのアクセサリーをレパートリーに加え、博物ふぇすなどのイベントにも参加するように。 パーティー当日も自作の美しいアクセサリーを身に纏っていらした。
▲イカとタコのスワロフスキーイヤリング
他にも、科学博物館の深海展でダイオウイカに魅せられた方、水族館で初めて生きているイカを見た方、ご出身地がイカの水揚げで有名だった方、などイカに興味を持った様々なエピソードを聞くことができた。 私がイカにこれほど熱を入れるようになったキッカケは葛西臨海水族園で見たアオリイカなのだが、これはまた別の機会に書くことにしよう。 (このパーティーに正にその葛西臨海水族園の方がいらしていて、密かに興奮した。) ※追記 イカが好きになったキッカケの話を書きました→イカを想う
どなたもイカについて語る顔が笑顔で満ちていて、本当にイカが好きであることがビンビン伝わってくる。閉ざされていた私の心も、皆さんのイカ熱に徐々に溶かされてきた。
▲料理がとても美味しい。イカとオリーブのソテー
私の右隣の女性、よしかさんはこのイカパーティーのもう一人の主催者だそう。聞けばまだピチピチの大学生というではないか。若い。 酒が回った勢いで話しかけてみる。 「よしかさんはどうしてイカが好きになったんですか?」
「14歳の時に、弟へのクリスマスプレゼントを買うついでに、何気なく自分用にゲッソー(イカを模したキャラクター)のぬいぐるみを買ったんです。買う時はなんとも思わなかったんですが、翌朝になって開封したら愛が爆発したんです。」(ゲッソーのぬいぐるみを握りしめながら)
なるほどなるほど。 ヤバイ人に声をかけてしまったようだ。私自身、相当のイカ好きを自負しているが、ゲッソー(およびイカ)について語っているときのよしかさんの目は爛々と輝いて、こちらが取って食われそうなほどである。 よしかさんのように思春期にイカに出会ってしまうとインパクトが大きいのかもしれない。今年の秋にフロリダで行われる頭足類学会にも出席するそうだ。
▲よしかさんのゲッソーコレクション
イカ好きあるあるを分かち合う
「みんなどうしてイカが好きじゃないんだろう」 「イカが好きって言うと、なぜ?と聞かれるけれど、猫や犬が好きな人になぜ?とは聞かないですよね」
「こんなに魅力的な生き物、好きになるの当然なのに」 「みんな本当の意味でまだイカに出会っていないんですよ」
「見て良し、触って良し、釣って良し、食べてよし、ですもんね」 「あ、私、愛おしすぎて一時期イカを食べられない時がありました」 「わかるー!」
「イカ見たくなってきた」 「サンシャイン国際水族館ならだいたいいつもイカいますよね」 「そうそう!イカ水槽複数あるから嬉しいですよね!」
緊張が解けるにしたがって、どんどん出てくる「イカ好きあるある」。 まさかこれを誰かと共有できる日が来るなんて。
私の友人は私のイカ話を嫌な顔せず聞いてくれる心の広い人たちばかりであるが、どうしても最初に説明をしなくてはならない。 「イカって魚なの?」「足、8本だっけ?」「そんなに種類あるの?」「触腕って何?」
もちろん、こういった説明をする時間も楽しい。楽しいのだけれど、同じようにイカを愛する人となら説明不要で純粋にイカの魅力、イカ情報、イカ活動について語り合えるのだ。 こんなに心弾む時間があるだろうか。話を切り替えても切り替えてもどこまでもイカの話。
私は今までイカを自分だけで楽しんできたし、それでいいと思っていた。この素晴らしさを誰かに伝えてしまうのがもったいないような気さえしていた。しかしそれがいざ解放されてみると、いかに自分がこういった交流に飢え渇いていたかがよくわかった。
パーティー会場がイカで満ち、私の渇きは癒されてゆく。
ブログに書くために覚えておこうとか、こんなことを質問しようだとかそういうことはすべて忘れてしまった。 今、ここにある幸せをむさぼりたい。
思えば昔から私の好きなものはいつも理解されづらく、語り合える友はほぼいなかった。 その反動からか、私の中でイカパーティーメンバーの方々との距離が(勝手に)グッと縮まった。 (魂の友よ・・・)無意識に心の中で語りかけたのであった。
▲イカスミ入りニョッキがグソクムシに見えると話題に
どんどんでるよ!イカグッズ自慢
左隣に座っていた高岩さんは漁協にお勤めで、わざわざ石川県から東京へ駆けつけてきたそう。イカだけでなく魚類にも詳しく、魚の魅力や食べ方を伝える伝道師として活躍している方だ。
イカのストラップをたくさん持ってきて「よくできているでしょう」と誇らしげ。 そしてなんと、これを我々にくださるという。私はその日持って行ったカメラに早速アオリイカを装着。格好いい~!
▲外套膜の模様からしてこれはメスだな
AAYAAさんは自作のビーズブローチを胸につけてアピール!これを付けて打ち合わせに行けば、覚えてもらえること間違いなしじゃなイカ? とっても素敵だったので、後日別のイカ(トビイカ)ブローチを購入させていただいた。
▲キラリと光るミミイカダマシとコウモリダコのブローチ
よしかさんはコウイカ型の1点物のリュックを背負ってきて注目を集めていた。 背負いたい人続出で大人気。大の大人がかわるがわるイカリュックを背負っているのは不思議な光景であった。 その想像以上のリアルさに、ガッチリ閉じていたはずの私の物欲の扉が開いてしまった。
▲リュックのベルト部分が触腕になっているのがポイント
宮内さんは、イカ好きの一部からは神様と崇められている奥谷喬司先生のサイン本で静かに応戦。 イカが好きではない方からするとピンとこないかもしれないが、奥谷先生の著書、『イカはしゃべるし、空も飛ぶ』『泳ぐ貝、タコの愛』などの愛読者である私からすると垂涎の一品である。
サインにイカの絵が入っているところが最高にCOOL。 私も自分のサインを考えたくなってしまった。特にサインする予定はない。
イカ好き必携の「世界イカ類図鑑」。こちらも宮内さん蔵書のものは一味違う。 一般的に出回っているもの(写真左)は「東洋大学出版」だが、宮内さんはもう一冊、「全国いかか工業協同組合の創立50周年記念出版」(写真右)バージョンを持っているのだ!(しかもこちらも奥谷先生のサイン入り)
全国いかか工業協同組合といえば、世界イカ類図鑑のWeb版、イカ学Q&A 50などを公開してイカの啓蒙に力を入れていらっしゃる組合で、私もWeb越しではあるがずいぶんお世話になっている。羨ましくてよだれが止まらない。
▲表紙に載っているイカが違う!
私は何も持っていなかったので、悔し紛れにアオリイカを捌いたときに撮った、美しい墨袋の写真を自慢した。 そこそこウケた。(と思う)
▲虹色に輝くアオリイカの墨袋
広がるイカの夢
宴もたけなわ、とめどなく溢れてくるイカの話。 話は自然とこれからの話に。
宮内さんが東京にいる間にみんなでサンシャイン国際水族館でイカを見る話が持ち上がったのだが、これは後日実際に行ったそう。いつの間にかできていたイカパーティのLINEグループにイカ写真や動画がどんどん投稿されていた。(私は仕事で行けなかった。無念。)
私がスミイカ釣りの話をしたところ、石川の高岩さんから「石川へ釣りに来ますか」、と。 イカ釣り名人も紹介してくださるとのことで、現在石川でのアオリイカ釣りを計画中である。
第2回のイカパーティーも必ずやろうと大盛り上がり。次の舞台は大阪に決定。 大阪なら海遊館がある、酢飯にイカ墨をまぜる寿司屋があるなど、どんどん情報が溢れてきて心は楽しみな気持ちではちきれそうだ。
▲イカスミ入りチョコレートケーキ。本当は「イカ」と書いてあった
パーティーで結ばれたイカの輪
さあ、楽しい時間もそろそろ終わり。 かなり酔っぱらってきたこともあり、テンションが上がった私は半ば強制的に人のスマホを操作してTwitterなどのSNSでイカメンバーと繋がった。(今考えたら結構失礼でしたね・・。今更ですが許してください。別れるのが寂しかったの。)
最後は1本締め、ならぬ、イカのゲソの本数にかけて10本締め! これにてイカパーティーお開き!
▲10本締め、練習無しでも上手にできました
幸せな気分が指先まで満ち満ちて、もしかしてこれは夢なのではないかしらんと幾度も思った。 しかし、後日続々届いたイカパーティーLINEが、夢ではなかったのだと教えてくれる。
皆、見事なまでにスタンプがイカ。同志よ・・・。再会を固く誓った。
▲意外と種類があるイカスタンプ
パーティーが行われたのは6月だったが、今でも様々なイカ画像、イカのイベント情報などをこのLINEでやり取りしている。あの日結ばれたイカの絆は固い。
抑え気味にしていたイカへの愛は、これで完全に解き放たれてしまった。 これからは、このイカパーティーで得た様々なインスピレーションをひとつずつ形にしていきたい。
改めまして、企画をしてくださった宮内さん、よしかさん、第1回イカパーティーメンバーの皆さま、そして会場のカフェの皆様、ありがとうございました! 今回は席が遠くてあまりお話が出来なかった方々とも、次はたっぷりお話ししたい。
これから新たに、イカ成分を増してゆくまいけるをどうぞよろしくお願いいたします!